1923(大正12)年生まれの、アメリカ史専攻の歴史学者猿谷要(さるたに・かなめ)さんが、「アメリカよ、美しく年をとれ」(岩波新書 2006年8月刊 本体700円+税)を出版しました。
猿谷さんは、日本人としての本格的なアメリカ史研究者として、もっとも早く取り組まれた人です。猿谷さん、こんな体験をしながら研究者となっていきました。旧制の仙台の第2高等学校での西洋史はフランスやドイツ中心、戦後まもなくの東大の西洋史学科でも、アメリカの歴史を教えてくれる先生が一人もいませんでした。
1945年7月上旬北海道の東の外れの西春別(現別海町)の軍の飛行場で、米軍のグラマン機の攻撃に遭遇します。そのとき近くまで来たので目撃できた飛行士が、22歳の猿谷さんより若いだろう少年だったのです。「鬼畜米英」と叩き込まれてきた猿谷さん、「私は戦っている相手のことを、まったく知らないでいたのではなかったか。」と気づきます。そのときから、アメリカを知りたいという思いが湧き、生涯の仕事につながっていきました。
本書はは、ご本人の半世紀以上にわたるアメリカ心象風景をまとめたものです。戦争体験からはじまり、幾多の訪米交流の中で、得られたことを、エッセイ風にまとめています。アメリカに対する暖かな思いにあふれた本です。「(65年間)私は敵国としてアメリカと戦ったり、友好国の一員となってアメリカの大学で学んだり、またアメリカでの生活を通じてその賛美者となったり、批判者となってきたりした。」
(序章 アメリカは若い国か)
猿谷さん、2003年に米ブッシュ政権がイラク戦争をはじめたとき、緊急に10数人の人と、アメリカへのよびかけ「アメリカよ!」という本を編纂したそうです。その本のご本人の文章が、「アメリカよ美しく年をとれ」。そのときからの思いを、結実されました。
本文の最後はこうしめくくられています。
「拡大強化されたEUと、世界人口の5分の1を占める中国を含んだ東アジアが、アメリカと並んで「世界三強」となる日が近づいている。そのときこそアメリカは、美しく初老の時期を迎えなければならないのである。」
目配りとバランスのとれた内容です。偏らず広く見るということの大事さ、痛感させてくれました。しかしイラク戦争に関しては、アメリカにとってすでに重荷であり、継続が困難であることを、猿谷さんは指摘しています。多くの方がお読みになることを期待します。
以上 (UT)
2006年09月19日
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