イラク戦争開始時のレバノン特命全権大使だった天木直人さんが、「外交力でアメリカを超える −外交官がたどりついた結論ー」を出版しました(かもがわ出版 2006年4月刊 本体価格1300円税別)。
天木さんは、ついこの間まで憲法9条を変えるべきかどうかについて確たる意見を持ち合わせていなかったそうです。外務省を辞めた(辞めさせられた?)あとの、自由な身になってからの自分の頭での思索の結果が、この本となりました。
「私が誰よりも強い護憲論者になったきっかけは、私が中東の小国レバノンに大使として勤務し、パレスチナ紛争の不条理を目撃したからです。米国の不正義な中東政策をしったからです。」(14ページ プロローグ)
天木さんはこの本の出版についてもとくに考えてはいなかったそうですが、京都での講演を聞いたかもがわ出版社からの重ねての提案に気持ちを変え応じることにしたそうです。
「イラク戦争に反対して外務省を辞した私は、俄か平和主義者、護憲主義者よろしく各地で講演を続けてきました。そのたびに、憲法9条を守ろうとする熱心な人たちが沖縄から北海道まで、この日本になんと多くおられるかと感動を覚えました。それはまた、組織を離れて1人で生きていく自分にとっての励みにもなりました。
この人たちとの出会いに感謝し、来るべき国民投票に備えてこれらの人たちと改憲阻止に向かって連帯を深めるべきではないか。憲法を守るために少しでも役立つことができるのであれば協力すべきではないか、講演録をまとめて1人でも多くの人々に護憲の重要性に気づいてもらうことができるのなら望外の喜びではないか、そう考えるようになったのです。」 (150ページ 出版によせて)
憲法9条について突き詰めて考えたことがない人たちにこそ聞いてほしい読んでほしいとという著者の気持ちが伝わります。
週刊現代2006年7月15日号にジャーナリスト井上佳武氏の寄稿が掲載されました。題して「『イラク出兵』自衛隊員「戦死者(自殺)5人』とPTSDに囚われた”帰還兵たち”」です。
帰還後自殺した自衛隊員の中で、陸上自衛隊第11師団のA3佐についてのことがでていました。彼は帰還後日米共同訓練の期間中に「米兵と一緒にいたら殺されてしまう」と騒いだ人物だそうです。じつは、サマーワ滞在中に、自衛隊の軽装甲気動車が米兵から誤射された事件があり、A3佐は警備責任者だったそうです。
また記事のなかでは軍事評論家の神浦元彰氏の発言を紹介しています。これも重要な指摘といわなくてはなりません。
「イラクにおいて、陸上自衛隊員が戦死した場合、国からの補償金は約1億円です。日本へ帰国してから自殺したケースでは、イラクへ派遣されたことと、自殺との因果関係を証明しなければならない。それができなければ、前例がないし、補償金はでないでしょう」
もし現地では無事であったとしても帰還後の問題、そしてイラクでは今後いっそう米軍の後方支援で働くという航空自衛隊のリスクの高まりの問題、深刻なことではこれからますます大きくなりそうです。この議事の副題が「小泉首相と防衛庁がひた隠す”ポチの代償”」のも、なかなかの鋭さでした。
そうした事態を直視し、考える意味でも、天木氏の問いかけは、重いものがあります。読んで読者が憲法9条と来るべき「国民投票」ついて、自分の頭で考えてみること、これが天木氏の望むところです。
(UT)
2006年07月08日
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