平野氏は「はじめに」でこう語っています。
「(長時間にわたって密度の濃い議論をすることが出来たのは)二人の間に、「ウェブ進化」によって、今、世の中がどう変わりつつあるのか、そして、人間そのものがどう変わりつつあるのかということへの素直な関心があったからである。これは言うまでもなく、同時代の多くの人が抱いている関心だろう。」
梅田氏も「おわりに」で語っています。
「ところで『ウェブ人間論』というタイトルの本書は、「ウェブ・人間論』と『ウェブ人間・論』との間を往来していると言える。
ウェブが広く人間にどう影響を及ぼしていくのか、人間はウェブ進化によってどう変容していくのだろうかという意味での「ウェブ・人間論』。
グーグル創業者や世界中に散らばるオープンソース・プログラマーのようなウェブ新世界を創造する最先端の人々、ウェブ進化とシンクロするように新しい生き方を模索する若い世代、そんな『ウェブ人間』を論ずる『ウェブ人間・論』。
この二つの『論』が『クモの巣』(ウェブ)の放射状に走る縦糸と同心円を描く横糸になって、本書は織り成されている。」
いささか乱暴な言い方が許されるならば、将来にむけて楽観論の梅田氏、楽観よりは慎重論の平野氏ではないでしょうか。もちろん見識ある両氏とその対談ですからそんな単純な決め付けで済むものではない内容です。
2年たったその対談、また読んでみても(じつは出版当時読み、強い印象を受けていました)改めて教えられる内容の濃さでした。古くはなっていず、その熱っぽさは現在にも及んでいるものと受け止めました。
11月4日結果が出た米国大統領選挙にも多大の影響を及ぼしたといわれるインターネットの力、そのこれからを考えてみるうえで、好適な入門書といえるでしょう。幅広い論点への言及は、本人たちの対談の結果からですが、よくわからないがいろいろ考えてみようという人にとっても、親切な手引きとなっています。
「カムイミンタラ」は休刊して1年後にウェブ版として再出発しました。さまざまな技術進歩を活用できたからで、紙媒体を休刊したときには考えもしていなかったことでした。記録保存をどうしたらということからの検討が、ウェブ版への歩みとなりました。1年という時間が活用条件を広げました。
思ってもいなかったウェブ版も発刊から3年以上経過しました。インターネット社会、ウェブ社会はさらに変容進化しているようですが、その息遣いを感じ続けながらの時間となっています。
以上 (UT) 081122