これは2005年から2006年にかけて週刊誌「サンデー毎日」に連載されていたものを、加筆改稿して登場です。
たまたま書店の店頭で目にし手に取ったのが出会いでした。抱腹絶倒、涙あり笑いありの内容です。これくらい面白いものも近来まれ(私には)な作品です。
あすなろ大学というところの応援団、団員がいなくなるということで廃部の危機をむかえます。そのための方策としてOBたちが考え出したのが、社会人を入学させ、再建を図るというもの。OBが創業社長であるエール商事の45歳のサラリーマン藤巻大介が送り込まれます。試験を突破しての入学者としてです。彼の悪戦苦闘がはじまります。他の登場人物も多彩です。世間とのズレ、かみあわなさ、しかし、「ひたむき」なのです。
はたして再建はなるか、という話です。ハラハラさせてくれる展開と結末です。全国に数多くの応援団OBがいるでしょう。その人たちにとっても、青春を思い起こさせる内容になっているかもしれません。
重松さん、いまや時代と会わなくなった大学応援団を舞台にして、損得打算ぬきの「ひたむきさ」「人への奉仕」の賛歌を歌い上げてくれました。執筆当時主人公のほぼ同年齢の重松さんでした。青春を振り返っての作者の気持の投影もあるのでしょう。
人は外見で決めつけてはならない、そんなやさしいメッセージも織り込まれているようでした。
重松さんの作品、ほとんど読んでいませんでした。最初といえるものが「あすなろ三三七拍子」というのも何かのご縁です。これから私ももっと重松作品と親しもうということになりました。
以上 (UT) 100524