2010年05月24日

おすすめします 重松清「あすなろ三三七拍子」

小説、ノンフィクションで活躍されている作家重松清さんが、新しい面を見せた小説「あすなろ三三七拍子」を単行本として出版しました。毎日新聞社から2010年3月発行です。

これは2005年から2006年にかけて週刊誌「サンデー毎日」に連載されていたものを、加筆改稿して登場です。

たまたま書店の店頭で目にし手に取ったのが出会いでした。抱腹絶倒、涙あり笑いありの内容です。これくらい面白いものも近来まれ(私には)な作品です。

あすなろ大学というところの応援団、団員がいなくなるということで廃部の危機をむかえます。そのための方策としてOBたちが考え出したのが、社会人を入学させ、再建を図るというもの。OBが創業社長であるエール商事の45歳のサラリーマン藤巻大介が送り込まれます。試験を突破しての入学者としてです。彼の悪戦苦闘がはじまります。他の登場人物も多彩です。世間とのズレ、かみあわなさ、しかし、「ひたむき」なのです。

はたして再建はなるか、という話です。ハラハラさせてくれる展開と結末です。全国に数多くの応援団OBがいるでしょう。その人たちにとっても、青春を思い起こさせる内容になっているかもしれません。

重松さん、いまや時代と会わなくなった大学応援団を舞台にして、損得打算ぬきの「ひたむきさ」「人への奉仕」の賛歌を歌い上げてくれました。執筆当時主人公のほぼ同年齢の重松さんでした。青春を振り返っての作者の気持の投影もあるのでしょう。

人は外見で決めつけてはならない、そんなやさしいメッセージも織り込まれているようでした。

重松さんの作品、ほとんど読んでいませんでした。最初といえるものが「あすなろ三三七拍子」というのも何かのご縁です。これから私ももっと重松作品と親しもうということになりました。

以上 (UT) 100524



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2010年05月03日

おすすめします 井原勝介「岩国に吹いた風」

山口県岩国市の前市長井原勝介さん(1950年生まれ)が「岩国に吹いた風 米軍再編・市民と共にたたかう」(高文研 2009年11月刊 )を出版していました。知らなかったのでたまたま書店の店頭で手に取り購入することとなりました。

題からすると何か勇ましい内容かと思っていました。そもそも井原さんに対するの私のイメージは、はるか北の地にいることもあり、マスコミ報道でしか知らない貧しいものでした。米軍艦載機の新たな岩国基地移駐に一貫して反対し、当時の日本政府などの圧力で、再選を期した2008年2月の市長選挙で敗れた人というものでした。

読んでびっくり、気負いとか激しさを感じさせない語り口でした。おだやかで淡々としているといったほうがよいでしょうか。語られる内容は重く厳しいものがあるのですが。井原さんが、岩国出身であり、労働省勤務を体験したのち、政治家として地方自治にとりくもうとしてことをはじめて知らされました。

自民党が政治支配をしていた時代のひとつの縮図、やり口がたいへん具体的に記述されていました。それだけでも意味がある内容です。

しかし、私が一番強く感じたことは、井原さんが、むしろ今しっかりと足元を見て着実な歩みを続けておられる、ということでした。そして井原勝介・寿加子夫妻が、ともに理解しあって、歩んでいることでした。

本の中で寿加子さんは「夫・井原勝介の背中ー妻からのメッセージ」の文章を寄せています。

「初心に戻り、『草の根ネットワーク岩国』という活動を(2009年)4月に始め、新しい本当の民主主義の芽をここ岩国で育てることを決意し、『草莽塾(そうもうじゅく)』という政治塾も始めました。
 そして私は、収入のない井原が、夢に向かって歩んでいく日々にもう少し付き合うことになりそうです。」

以上 (UT) 100503



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