週刊ウェブマガジン「マガジン9条」4月23日号の「伊藤真のけんぽう手習い塾(第64回)」で、伊藤真法学館憲法研究所長が、4月17日の名古屋高裁イラク自衛隊派兵違憲判決について言及しています。題して「イラク派兵9条違憲判決の効力」です。目配りのきいたある意味で詳細な発言で、幅広い論点に関して伊藤氏の所見が述べられています。多くの人に読んでもらい、その意見に対して、読んだ人それぞれが考えてほしいという気持にあふれた発言です。
その一部を紹介します。
「さて、その政治家ですが、与党の政治家からは、あの判決は、高裁だし、傍論にすぎないから、拘束力はなく従う必要はないという声が強いようです。福田首相も『それは判断ですか。傍論。脇の論ね。』空自の活動についても『問題ないんだと思いますよ。』と述べている。これはいくつかの点で誤解があるように思われます。
まず判決の拘束力の問題は、当該判決が、類似する別の事件に関して後の裁判所をどこまで拘束するのかという議論です。判決が立法権や行政権に対してどのような影響を持つのかという問題とは関係ありません。こちらは判決の権威性の問題であり、判決の拘束力の問題とは別ものです。これを混同している人が多いようです。
そして傍論にすぎないから拘束力がないという議論は、この拘束力の問題であり、後の裁判所が今回の判決に従う必要があるかどうかが問題になるときに必要な議論であり、ここで問題にしているような国会、内閣のとるべき対応とは直接、関係ありません。」
「以上から、今回の違憲判断は傍論でも蛇足でもなく、必要な判断として適切に行われたものといえます。
こうした裁判所の判断を行政府や立法府が無視することがあってはなりません。たとえ下級裁判所の判断であっても、丁寧に事実認定をした上での司法権の判断ですから、それに対して敬意を払い、慎重に当該問題の合憲性について再検討することが、三権分立からの要請であり、憲法を尊重する立憲民主主義国家の政治家の態度だというべきでしょう。
今回の判決に対する与党政治家の反応は、無知と無教養に起因するだけでなく、憲法を尊重する態度の欠如と思い上がりがその原因であるように思われます。そしてそれを許してしまう野党政治家とマスコミ、そして私たち国民にも問題がありそうです。」
以上 (室長)080429
2008年04月29日
2008年04月21日
自衛隊イラク派遣、名古屋高裁で違憲判決出る
故箕輪登さんが、自衛隊のイラク派遣差止訴訟を最初に札幌地裁で起こしてから、それに続いて全国で市民による同種の訴訟が提起され、現在まで各地で裁判が続けられています。札幌の訴訟は、箕輪さんに加え、第2次原告も加わって続けられることとなりました。地裁審理段階で箕輪さんと他1名の原告がなくなられましたが、残りの原告が引き続き札幌高裁に控訴して裁判は続いています。
4月17日、名古屋での裁判(控訴審)で、画期的な判決が名古屋高裁(青山邦夫裁判長)で出されました。結論は原告側の敗訴とした名古屋地裁の判決を踏襲し、原告側控訴を棄却しているものの、判決の中で、重要な判断が出されました。イラクでの航空自衛隊の活動は「武力行使を禁じたイラク特措法に違反し、憲法九条に違反する活動を含んでいる」とし、さらに平和的生存権について「九条に違反するような国の行為、すなわち戦争の遂行などによって個人の生命、自由が侵害される場合や、戦争への加担・協力を強制される場合には、その違憲行為の差し止め請求や損害賠償請求などの方法により裁判所に救済を求める場合がある」と言及しました。その内容に、原告側は「画期的判決」で「実質的な勝訴判決」と受け止めました。原告側は上告しない方針で、今回の高裁判決は確定することになります。
憲法九条をめぐる裁判で違憲判断がでたのは、これまでは1959年の砂川事件1審で「米軍の駐留」についてと、1973年の長沼ナイキ訴訟1審での「自衛隊」についてだけでした。長沼訴訟で札幌地裁で裁判長だった福島重雄さんは、現在77歳ですが、富山県で弁護士をされておられるようで、この知らせに深い感慨を覚えたと朝日新聞4月18日朝刊は伝えています。
故箕輪登さんは、今回の判決を草葉の陰でどれほど喜んでおられることでしょうか。2006年5月17日に行われた箕輪さんの葬儀のときの箕輪家のお礼文書での故人の言葉は以下のようなものでした。
「何とかこの日本がいつまでも平和であって欲しい。平和的生存権を負った日本の年寄り1人がやがて死んでいくでしょう。やがては死んでいくが死んでもやっぱり日本の国がどうか平和で働き者の国民で幸せに暮らして欲しいとそれだけが本当に私の願いでした。」
「ウェブマガジン カムイミンタラ」の2006年5月号(ウェブ版第9号)特集は「元自民党代議士・箕輪登さんが問うたもの イラク派兵差止訴訟」です。2006年2月27日の札幌地裁での箕輪さんの口頭弁論(生前最後のまとまった見解表明でした)のことを中心にとりあげています。ぜひ改めてお読みいただければと思います。
以上 (室長) 080421
4月17日、名古屋での裁判(控訴審)で、画期的な判決が名古屋高裁(青山邦夫裁判長)で出されました。結論は原告側の敗訴とした名古屋地裁の判決を踏襲し、原告側控訴を棄却しているものの、判決の中で、重要な判断が出されました。イラクでの航空自衛隊の活動は「武力行使を禁じたイラク特措法に違反し、憲法九条に違反する活動を含んでいる」とし、さらに平和的生存権について「九条に違反するような国の行為、すなわち戦争の遂行などによって個人の生命、自由が侵害される場合や、戦争への加担・協力を強制される場合には、その違憲行為の差し止め請求や損害賠償請求などの方法により裁判所に救済を求める場合がある」と言及しました。その内容に、原告側は「画期的判決」で「実質的な勝訴判決」と受け止めました。原告側は上告しない方針で、今回の高裁判決は確定することになります。
憲法九条をめぐる裁判で違憲判断がでたのは、これまでは1959年の砂川事件1審で「米軍の駐留」についてと、1973年の長沼ナイキ訴訟1審での「自衛隊」についてだけでした。長沼訴訟で札幌地裁で裁判長だった福島重雄さんは、現在77歳ですが、富山県で弁護士をされておられるようで、この知らせに深い感慨を覚えたと朝日新聞4月18日朝刊は伝えています。
故箕輪登さんは、今回の判決を草葉の陰でどれほど喜んでおられることでしょうか。2006年5月17日に行われた箕輪さんの葬儀のときの箕輪家のお礼文書での故人の言葉は以下のようなものでした。
「何とかこの日本がいつまでも平和であって欲しい。平和的生存権を負った日本の年寄り1人がやがて死んでいくでしょう。やがては死んでいくが死んでもやっぱり日本の国がどうか平和で働き者の国民で幸せに暮らして欲しいとそれだけが本当に私の願いでした。」
「ウェブマガジン カムイミンタラ」の2006年5月号(ウェブ版第9号)特集は「元自民党代議士・箕輪登さんが問うたもの イラク派兵差止訴訟」です。2006年2月27日の札幌地裁での箕輪さんの口頭弁論(生前最後のまとまった見解表明でした)のことを中心にとりあげています。ぜひ改めてお読みいただければと思います。
以上 (室長) 080421
2008年04月08日
おすすめします ボブ・ドローギン「カーブボール」
米大手新聞社ロサンゼルス・タイムスの記者ボブ・ドローギン記者の綿密な調査取材による著作「カーブボール」が、田村源二氏の翻訳で出版されました。産経新聞出版、2008年4月刊行ですが、まことにタイムリーな出版です。イラク戦争が引き起こした事態はまだ続いています。どう日本人として向き合うべきかでも示唆を与えてくれるものとなっています。
不確実な情報がアメリカによるイラク戦争の大義の根拠とされていました。その情報源のこと、開戦前に大統領の演説や、国務長官の国連演説で使われていった経過、そしてガセネタであることが明らかにされていった経過と結果、ドローギン記者は濃密に語っています。
題となっている「カーブボール」は、情報源のイラク人につけた米側情報機関ののコードネームです。「カーブボール」は野球で使われている球種カーブのことです。また違った意味「ペテン、ごまかし」でも一般的に使われているそうです。本書を読むと、皮肉なことにまさにその意味ズバリの言葉がコードネームにされていたのです。
訳者は「訳者あとがき」で述べています。
「(米諜報機関CIAがおかした歴史的大失態は)国家間の外交だけでなく、社会のあらゆるレベルで、正確なインテリジェンス(情報召集・分析・評価・防諜・謀略)が必要となっているいま、本書から学びとれる教訓はきわめて必要だ。また、このとんでもない誤りを生んだものは冤罪を生む構造に符合する、と指摘するかたもおられる。なるほど、と膝を打たずにはいられない。要するに本書は、さまざまな誤謬につながる普遍的な構造をも示してくれているのだ。」(511ページ)
結局CIAは2004年5月26日に内部通達で「カーブボール」からの情報を取り消しました。さらにその2週間後、米議会の情報活動を監視する委員会にそれを伝えました。当時のCIA長官テネットは、みずから国務省のパウエル長官に電話し、この知らせを伝えたそうです。
「受話器をおいたとき、パウエルは頭から湯気がたつほど激怒していた。この件は『完全に砕け散ってしまった」とパウエルはのちに言う。」(477ページ)
品川正治さんの言葉「戦争を起こすのも人間、戦争を止めるのも人間」が思い起こされました。
以上 (UT) 080408
不確実な情報がアメリカによるイラク戦争の大義の根拠とされていました。その情報源のこと、開戦前に大統領の演説や、国務長官の国連演説で使われていった経過、そしてガセネタであることが明らかにされていった経過と結果、ドローギン記者は濃密に語っています。
題となっている「カーブボール」は、情報源のイラク人につけた米側情報機関ののコードネームです。「カーブボール」は野球で使われている球種カーブのことです。また違った意味「ペテン、ごまかし」でも一般的に使われているそうです。本書を読むと、皮肉なことにまさにその意味ズバリの言葉がコードネームにされていたのです。
訳者は「訳者あとがき」で述べています。
「(米諜報機関CIAがおかした歴史的大失態は)国家間の外交だけでなく、社会のあらゆるレベルで、正確なインテリジェンス(情報召集・分析・評価・防諜・謀略)が必要となっているいま、本書から学びとれる教訓はきわめて必要だ。また、このとんでもない誤りを生んだものは冤罪を生む構造に符合する、と指摘するかたもおられる。なるほど、と膝を打たずにはいられない。要するに本書は、さまざまな誤謬につながる普遍的な構造をも示してくれているのだ。」(511ページ)
結局CIAは2004年5月26日に内部通達で「カーブボール」からの情報を取り消しました。さらにその2週間後、米議会の情報活動を監視する委員会にそれを伝えました。当時のCIA長官テネットは、みずから国務省のパウエル長官に電話し、この知らせを伝えたそうです。
「受話器をおいたとき、パウエルは頭から湯気がたつほど激怒していた。この件は『完全に砕け散ってしまった」とパウエルはのちに言う。」(477ページ)
品川正治さんの言葉「戦争を起こすのも人間、戦争を止めるのも人間」が思い起こされました。
以上 (UT) 080408