2006年07月31日

積水ハウス「在日コリアン社員の差別にかかわる訴訟」支援

7月31日、日本経済新聞朝刊39面に、「社員の訴訟、会社支援」の見出しの記事が掲載されました。「異例」の内容です。

見出しが「 『在日差別』と顧客を提訴へ 社員の訴訟、会社支援」で、その会社は大阪の住宅大手の積水ハウスでした。

「大手住宅メーカーに勤務する在日コリアンの男性社員が、『差別発言で傷つけられた』として、顧客の男性に300万円の慰謝料などを求める訴えを31日、大阪地裁に起こす。会社も訴訟費用を負担するなど訴訟を後押しする。」
「原告側の津田尚広弁護士によると、勤務中に社員が受けた差別発言をめぐり、企業が訴訟を支援するのは異例。」

会社が受けて立つ訴訟とは別に、企業が社員の訴訟を支援するケースは、例がないわけではありません。理由も含めどうしてかなどということも、いくつも考えられるものです。しかし、記事のような在日差別に対する訴訟への会社「支援」は私も報道としては初めて聞いた気持ちです。それだけ驚きました。

会社としての積水ハウスの決断と対応姿勢、まことにすばらしいことと思えました。内容をしっかり確認したうえでの判断であることがうかがわれ、会社姿勢を知らせてもらう機会になりました。記事内容の発言をしたとすると、被告となるマンションオーナー氏も反省する良い機会に裁判をしてほしいものです。しかし、そうしたことはあたりまえになっていくことがこれからなのでしょう。驚くようでは、私は時代を見ていないのかもしれないと考える機会とすることにしました。「くさいものにふた」「なあなあまあまあ」で済むこととそうはいかないこと、もっとありそうです。

以上 (室長)
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2006年07月26日

おすすめします 「中学生はこれを読め」

ブックレット「中学生はこれを読め」(北海道書店商業組合・編 北海道新聞社 本体価格500円+税)がでました。

2004年から「本屋のオヤジのおせっかい ”中学生はこれを読め!”」フェアがはじめられ、今年で3回目、札幌の27書店ではじまったものが、全道に拡大、さらには本州の書店にも広がりました。関心や理解のひろまるなか、今回の紹介書となったものです。

書店員がすすめる500冊のリストが掲載されています。多彩で多様な構成です。そのなかから120冊をさらにセレクションとし、元気になれる本、新しい自分に出会える本などと5分野に分けて書店員による解説つきで紹介しています。坂本勤さん、福田洋子さんの対談「本をすすめる大人になろう」も、本との出会いの楽しさ面白さを伝える内容です。

この取組みの口火を切った久住邦晴さん、序文で書いています。
「最近、子どもたちの読書離れが声高に言われている。札幌市では不読者(1か月に1冊も本を読まない)の割合が小学生で11%、中学生ではなんと28%にもなる。
でも一番身近であるはずの町の本屋に彼ら向きの本がほとんどないというのではとやかく言うことなんで出来やしない。
そこで反省し、『中学生の棚』を作ることにした。まず選書とリスト作りから、選書の基準はただひとつ『面白いこと』だけ。本から離れてしまった中学生たちに本の面白さを分かってもらいたかった。『ためになる』とか『勉強になる』はその後だ。」

(UT)
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2006年07月21日

昭和天皇、A級戦犯靖国神社合祀で参拝中止

2006年7月20日日本経済新聞朝刊は大きな特ダネを報じました。故昭和天皇発言についての富田宮内庁長官(故人)の在職当時のメモや手帳を日本経済新聞社が入手し、とりあえず靖国神社参拝に関する内容を報じたものです。

1978年に靖国神社にA級戦犯が合祀されて以来、同神社に参拝しなくなったことに関して次のように発言していました。

「私は 或る時に A級が合祀されその上 松岡、白取までもが
筑波は慎重に対処してくれたと聞いたが 
松平の子の今の宮司がどう考えたのか 易々と 
松平は 平和に強い考があったと思うのに 親の心子知らずと思っている
だから 私あれ以来参拝していない それが私の心だ」

戦後も靖国神社を参拝し続けた昭和天皇でしたが、1975年を最後として死ぬまで参拝はありませんでした。それについては、いろいろな憶測や意見がでていましたが、決着がついたようです。合祀を問題としたことは間違いないこととなりました。現天皇も即位以降参拝はしていません。

敗戦と戦後を、私なりにふりかえってみる機会にもなりました。

(室長)
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2006年07月19日

おすすめします きむらゆういち「あらしのよるに」シリーズ

「あらしのよるに」(きむらゆういち作 あべ弘士絵 講談社)はアニメ映画にもなりました。狼とヤギが嵐の夜に同じ場所に逃げ込みました。暗闇の中で、お互いにどんな相手か気づかず、友達になろうということになりました。それからがお話がはじまります。

絵本としては7巻で、それぞれ題は違っています。最初が「あらしのよるに」以降「ありはれたひに」「くものきれまに」などなど、最後が「しろいやみのはてで」となります。1994年からの連作、巻を重ねるたびに、評価が高まっていったものだそうです。映画は最初の内容だけにはとどまっていません。

おくればせながらの紹介です。本来、獲物と捕食者の関係の狼と山羊が、友達になる、なれる、これはなかなかの提起ではないかと考えました。そのことを読み手がそれぞれどう受け止めるか、夢と想像を働かせる絵本です。きむらさんも行間を読んでほしいようです。時代ともかみあった本かも知れないと考えるのは大人の勝手読みでしょうか。

絵のあべ弘士さんは、また旭山動物園飼育係から専業作家になった方です。あべさんの温かな絵が、またなんともいえない雰囲気をかもし出しています。じつは、あべ弘士さんの講演を前に聞いたこと、映画になって関心を持ったことが、普段絵本を見ない私にも「あらしのよるに」を手にとらせました。

(UT)
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2006年07月17日

イスラエル、そして北朝鮮

イスラエル軍のヨルダン侵攻が起こり、パレスチナ・ガザ地区侵攻に続いて軍事作戦が拡大することになりました。戦争状態といってもよい状況となりました。国連安全保障理事会、これについての決議要請に対して、採決を行いました。アメリカが拒否権を行使、決議とはなりませんでした。緊迫の事態に対して、まっとうな対応とはいえない結果ではないでしょうか。先行きの展開次第では、深刻な問題を世界はかかえこむことになります。

その国連安全保障理事会、そのあとでの審議となった北朝鮮ミサイル発射問題では、全会一致での非難決議を採択しました。当然といえる内容です。しかし日米両国が当初めざした内容とはなりませんでした。アメリカのイスラエル擁護の姿勢、日本のアジアとのギクシャク、決議内容に影響を与えていることは間違いないようです。

何が平和のための共通認識なのか、共通認識になるのか、胸に手をあてて考える必要があります。アメリカ自体が、真剣に考えるべき問題も大きなものがあります。ベトナム戦争のときも、当時のアメリカでも、「大砲とバター」は両立しませんでした。膨大な戦費の垂れ流しに、いつまで耐えられるのでしょうか。そのしわよせが日本にむけられてくるということにならないのでしょうか。つい最近、日本の現総理大臣小泉氏は、訪米の際、ブッシュ米大統領の前でプレスリーのものまねをしたとマスコミに報じられました。そのことについてのアメリカの報道はきわめてクールだったようです(7月17日朝日新聞藤原新也氏寄稿より)。深く物事を考えての行動する人とは思われない印象を受けるのです。

(室長)
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2006年07月15日

おくやみ申し上げます 高川マキ子さん

カムイミンタラ2001年3月号(通巻103号 アーカイブズ集録)特集は「わが愛するススキノ」でした。はせ川観光の長谷川さん、バーやまざきの山崎さん、そして紅一点はマキの店の高川マキ子さんの3人の座談会で、ススキノの過去現在未来を縦横に語る内容です。

そのおひとり、高川さんがこの7月12日に亡くなられ、13日14日に葬儀が行われました。一番年下の高川さんが、あの世へ早々と旅立ちをされてしまったのです。

ご冥福を心から祈らせていただきます。

(室長)
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2006年07月11日

朝鮮日報2006年7月11日社説

7月11日韓国の新聞「朝鮮日報」が、「国家としての良心を失った日本の先制攻撃論」と題した社説をインターネット日本語版で掲載しました。一部を引用します。

「日本の安倍官房長官は10日の記者会見で『ミサイル等の基地をたたくことも法律上の問題としては自衛権の範囲内として可能との見解がある。日本国民と国家を守るために何をすべきか観点から、つねに検討研究を行うことは必要ではないか』と話した。

(中略)

3人(注 額賀防衛庁長官、麻生外務大臣、安倍官房長官)の発言は、ともに北朝鮮のミサイル基地への先制攻撃を検討するという意味だ。

今回の北朝鮮ミサイル発射に先立ち米国のペリー前国防長官が北朝鮮ミサイル基地の先制攻撃を主張し、ミサイル発射後にはワシントン・ポスト紙がペリー長官の主張を1つの選択肢として検討すべきだという社説を掲載した。日本はこうした米国の一部から出ている先制攻撃論に相乗りしようとの考えのようだ。

(中略)

日本はわずか約100年前に韓半島を戦場化し、中国やロシアと戦争を行い、韓半島を『奴隷状態』下に置いて支配した罪深い国だ。

その日本が、米国の背中に乗っかって声高に先制攻撃を叫び、もう一度隣国を火の海に陥れようとすることが、いったいあってよいものだろうか。また、それが良心ある国家のあるべき姿と言えるだろうか。

日本は韓半島の分断と北朝鮮という国の誕生そのものが、植民支配という日本による罪業の負の遺産であるという事実を忘れたのだろうか。日本がこの地を侵略していなければ、あるいは日本が第2次世界大戦で早期に降伏しさえしていれば、北朝鮮という国は誕生していなかっただろう。

韓民族にそうした重い罪業を犯した日本だからこそ、たとえ米国が先制攻撃計画を打ち出しても、『それだけは避けなければいけない』と引き留め、代案を示すべきであり、それが人倫に沿った国のあり方ではないだろうか。」

たいへん率直な主張と受け止めました。政権中枢にいる安倍氏らの北朝鮮ミサイル発射問題にかこつけた発言、ご本人たちの見識が疑われてしまうようなしろものです。

韓国各界からの反応、敏感で厳しいものであるようです。韓国紙「朝鮮日報」の発言もそのひとつです。安部氏らばかりでなく日本人として、耳を傾けるべき直言ではないでしょうか。

以上 (室長)
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2006年07月09日

エーレン・ワタダ中尉

7月5日、現役将校エーレン・ワタダ中尉(29歳)を、アメリカ合衆国陸軍は軍法会議にかけるべく、訴追をしたとマスコミが報じました。電子版で見るかぎりですが、アメリカではかなりの大きな報道となっているようです。インターネットでの「エーレン・ワタダ中尉」での検索で、そうしたことの大半を知りました。ワタダ中尉は、辞職が認められなかった結果、自己責任と周囲の理解により、大きな踏み出しを行うことになりました。

日本の大手マスコミは、軍事力対比では問題にならない北朝鮮のミサイル発射問題、小泉首相のアメリカ訪問での「日米同盟」のぶちあげ、などは大々的なたれながしともいえるとりあげかたです。それにくらべて、ワタダ中尉のことについてのめだたなさは、驚くばかりです。

ワタダ中尉は、今年はじめ陸軍に辞職願いをだしましたが受理されず、イラク出兵を拒否する姿勢を明確にしてきました。6月7日に声明を公表し、6月22日に派遣命令を正式に拒否したそうです。

その結果、陸軍は次の3項目の統一軍事裁判法違反で訴追したそうです。
(1)部隊の移動に参加しなかったこと(統一軍事裁判法第87条)
(2)大統領に対する侮辱行為(同法第88条)
(3)将校にふさわしくない行為(同法133条)

「勇気」とは何かを、「判断力」とは何かを、考えさせられることになりました。ワタダ中尉の声明を読んでも、彼の意見行動が、どこが大統領に対する侮辱行為につながることなのか、どこが将校にふさわしくない行為につながることなのか、私にはわかりませんでした。気負いのないやさしさにあふれた自立した個人の発言としか受け止められなかったものですから。

インターネットサイトで、今井さんという方が、ワタダ中尉の声明を日本語訳にし、その転載を認めていますので、ここにも再録いたします。

ーーー

声明
エーレン・ワタダ中尉
2006年6月7日

家族、友人、信仰心篤い地域のみなさん、マスコミのみなさん、そして全てのアメリカ人同胞のみなさん。本日はおこしいただき、ありがとうございます。

私はエーレン・ワタダと申します。アメリカ合衆国陸軍中尉であり、3年間服務しています。

合衆国陸軍の将校として、重大な不正義に対して声を上げることは自分の義務であると考えます。私の道徳と法的義務は、憲法に対するものであり、無法な命令を下す者に対して負うものではありません。きょう私がみなさんの前に立つのは、兵士たち、アメリカの民衆、そして声を上げることもできない罪なきイラクの人々のために何かを行い、彼らを守ることは私の任務だと考えるからです。

米国軍隊の将校として、イラク戦争は道義的に過ちであるばかりでなく、合衆国の法をも手荒く侵害する行為であるという結論に達しました。私は抗議のために退役しようと試みましたが、にもかかわらずにこの明白に違法な戦争に加わることを強制されています。違法行為に参加するようにという命令は、間違いなくそれ自身が違法です。私は、名誉と品性を重んじる将校として、この命令を拒否しなくてはなりません。

イラク戦争は、抑制と均衡というわが国の民主的システムを侵害しています。この戦争は、憲法の規定によってアメリカの国内法と同等とされる国際条約や国際的慣習に違反しています。ほとんど満足な説明もなされていないイラク民衆への大量殺戮と残虐行為は、道徳的に重大な誤りであるにとどまらず、陸上戦に関する軍事法そのものの違反行為でもあります。この戦争に参加すれば、私自身が戦争犯罪の片棒を担ぐことにもなるでしょう。

平常であれば、軍隊にいる人間も、自分の思うことを話し、自分の利益になるよう行動することは許されます。そうした時代は終わってしまいました。私は上官に対して、われわれの行動の意味するところを大局に立って判断するよう求めました。しかし、まっとうな回答はえられそうにもありません。私は、将校に就任するとき、アメリカの法と民衆を守ることを宣誓しました。違法な戦争に参加せよとの違法な命令を拒むことにより、私はその宣誓に従います。
ありがとうございます。

ーーーー

以上(室長) 追記 長文となりましたことおわびします。
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2006年07月08日

おすすめします 天木直人「外交力でアメリカを超える」

イラク戦争開始時のレバノン特命全権大使だった天木直人さんが、「外交力でアメリカを超える −外交官がたどりついた結論ー」を出版しました(かもがわ出版  2006年4月刊 本体価格1300円税別)。

天木さんは、ついこの間まで憲法9条を変えるべきかどうかについて確たる意見を持ち合わせていなかったそうです。外務省を辞めた(辞めさせられた?)あとの、自由な身になってからの自分の頭での思索の結果が、この本となりました。

「私が誰よりも強い護憲論者になったきっかけは、私が中東の小国レバノンに大使として勤務し、パレスチナ紛争の不条理を目撃したからです。米国の不正義な中東政策をしったからです。」(14ページ プロローグ)

天木さんはこの本の出版についてもとくに考えてはいなかったそうですが、京都での講演を聞いたかもがわ出版社からの重ねての提案に気持ちを変え応じることにしたそうです。

「イラク戦争に反対して外務省を辞した私は、俄か平和主義者、護憲主義者よろしく各地で講演を続けてきました。そのたびに、憲法9条を守ろうとする熱心な人たちが沖縄から北海道まで、この日本になんと多くおられるかと感動を覚えました。それはまた、組織を離れて1人で生きていく自分にとっての励みにもなりました。
 この人たちとの出会いに感謝し、来るべき国民投票に備えてこれらの人たちと改憲阻止に向かって連帯を深めるべきではないか。憲法を守るために少しでも役立つことができるのであれば協力すべきではないか、講演録をまとめて1人でも多くの人々に護憲の重要性に気づいてもらうことができるのなら望外の喜びではないか、そう考えるようになったのです。」 (150ページ 出版によせて)

憲法9条について突き詰めて考えたことがない人たちにこそ聞いてほしい読んでほしいとという著者の気持ちが伝わります。

週刊現代2006年7月15日号にジャーナリスト井上佳武氏の寄稿が掲載されました。題して「『イラク出兵』自衛隊員「戦死者(自殺)5人』とPTSDに囚われた”帰還兵たち”」です。

帰還後自殺した自衛隊員の中で、陸上自衛隊第11師団のA3佐についてのことがでていました。彼は帰還後日米共同訓練の期間中に「米兵と一緒にいたら殺されてしまう」と騒いだ人物だそうです。じつは、サマーワ滞在中に、自衛隊の軽装甲気動車が米兵から誤射された事件があり、A3佐は警備責任者だったそうです。

また記事のなかでは軍事評論家の神浦元彰氏の発言を紹介しています。これも重要な指摘といわなくてはなりません。
「イラクにおいて、陸上自衛隊員が戦死した場合、国からの補償金は約1億円です。日本へ帰国してから自殺したケースでは、イラクへ派遣されたことと、自殺との因果関係を証明しなければならない。それができなければ、前例がないし、補償金はでないでしょう」

もし現地では無事であったとしても帰還後の問題、そしてイラクでは今後いっそう米軍の後方支援で働くという航空自衛隊のリスクの高まりの問題、深刻なことではこれからますます大きくなりそうです。この議事の副題が「小泉首相と防衛庁がひた隠す”ポチの代償”」のも、なかなかの鋭さでした。

そうした事態を直視し、考える意味でも、天木氏の問いかけは、重いものがあります。読んで読者が憲法9条と来るべき「国民投票」ついて、自分の頭で考えてみること、これが天木氏の望むところです。

(UT)
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2006年07月01日

おすすめします 有川浩「図書館戦争」

「図書館戦争」(有川浩作 メディアワークス 2006年3月刊 税込価格1680円)、題だけでは、中味はまったくわからないという意外性もありました。「メディア良化法」なる法律が制定され、政府の手になる武装組織メディア良化委員会が、本の検閲と没収を行うという近未来の日本が舞台の小説です。

このメディア良化法なるもの、「公序良俗を乱し人権を侵害する表現を取り締まる」という趣旨の法律だそうで、このもっともらしさ、昨今のあれやこれやにも通じるものがあるのかもしれません。これに対して、図書館が「武装組織の防衛隊」を結成、図書館の自由、言論出版の自由のために対抗するという設定となっています。その防衛隊の新人女性隊員笠原郁の悪戦苦闘が、ユーモアたっぷりに描かれています。

冒頭が、郁の就職先の図書館の様子を親に知らせようという手紙の書き出し。なんとその中に戦闘訓練も行っていますとのくだりを書きかけて、筆が止まるところから物語ははじまります。しめくくりが、改めて送ろうとする書き直した手紙の内容です。その間に起こり体験したさまざまな出来事と、直面した郁のけっこうミーハーな(死語でしょうか)な言動が、とにかく面白いお話です。ぞっとする内容をこうまで笑わせる著者、1972年生まれだそうですが、たいへんな力量とお見受けしました。

続編はあるのかないのか、気にさせられてしまった本でした。私は続編を期待します。

(UT)
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