10月に「恥さらし 北海道警 悪徳刑事の告白」が講談社より出版されました。著者は、稲葉圭昭(いなば・よしあき)氏、北海道警察銃器対策課・元警部です。本人はこの2011年9月23日、懲役9年の刑期を終えました(2010年6月に仮出所)。2003年4月に有罪となり服役の身でした。現職警官でありながら、覚醒剤の使用、営利目的所持、銃刀法違反の罪を問われてです。
「恥さらし」は、稲葉氏の警察官人生のはじまりから、転落、そして逮捕有罪服役の歩みが、本人によって語られています。北海道警察(道警)の「銃器対策課のエース」と呼ばれたこともあった彼が、どうして悪徳警官となってしまったのか、重い現実です。
暴力団対応の警察と警察官の活動の困難さ、難しさが、よくわかる内容です。真剣に取り組んだものの、道を踏み外してしまった人間の反省と自戒が、淡々と語られています。また組織の間違った方針がどれほど、第一線の活動をゆがめるものであるかの、問題提起の書にもなっています。
かっての上司でもあった原田宏二氏(市民の目フォーラム代表)が「稲葉佳昭と私」と題して解説を寄稿して最後に載っています。原田氏が刑務所の稲葉氏に送った手紙に対し、稲葉氏が自らの罪の償いの意味で「その意味で日記(回想録)というのも一つの手段と思います」と返事があったそうです。その言葉の実現が今回の本と原田氏はとらえました。
原田氏は2004年2月道警の裏金告発を行いました。そのきっかけのひとつに、とかげの尻尾の切捨てのような稲葉氏への道警の対応への怒りももあったそうです。原田氏登場のテレビ番組を稲葉氏は千葉刑務所で見たそうです。ウェブマガジン カムイミンタラ 2005年11月号(通巻126号)特集「草の根の声を知事と道議会に」で、当時の原田氏たちの裏金解明への努力を取り上げています。
皮切りの原田宏二氏、続いた斉藤邦雄氏はそれぞれ「たたかう警官」(現ハルキ文庫 最初の書名は「警察内部告発者」)、「くにおの警察官人生」(共同文化社)を機会あって出版、自らの声をまわりに届けました。「恥さらし」はそれにつづくものとなりました。それぞれの立場状況にあっての腐敗不正を許さないという姿勢、3著で多面的多角的に理解できるのではないでしょうか。
稲葉氏は終章で以下のようにしめくくっています。
「最後になりましたが、これまで述べてきた私の罪について関係者をはじめ、国民の皆様に深くお詫び申し上げます。そして道警銃器対策課が行ったさまざまな違法捜査について、今になっても一切その責任を認めようとしない道警組織や幹部たちに代わり、深謝します。
そして、私の社会復帰を応援してくれた方々には心から謝意を申し上げたい。高校の同級生や大学の柔道部の仲間たちには服役中も出所後の今も、多大な支援をいただいています。
また拘置所、刑務所で私を気にかけ、いつも声を掛けてくださった刑務間の方々は、私に立ち直るきっかけを与えてくれました。仮出所から刑期満了日までの1年3ヶ月の間、日々の生活から仕事面にいたるまで、さまざまなアドバイスをいただいた保護監察官、保護司の先生方にも、心から感謝しています。
何よりも刑務所で服役していた8年間、このような私を待っていてくれた家族には頭も上がりません。
私を支えてくださったすべての方々に、心より感謝いたします。」
稲葉佳昭さん、これからの一歩一歩しっかり歩んでください。また今回の真摯な問いかけは、多くの人に届くこと間違いないでしょう。この世の中、捨てたものばかりではないのですから。日本の警察の仕組みもありかたも問い直されていることは間違いないようです。
2011年10月11日 室長
posted by kamuimintara at 14:45| 北海道 ☔|
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